Windows歴20年だった私が、なぜMacとの「二刀流」に行き着いたのか 1巻

あなたは今、何のPCを使っていますか?

おそらく多くの方が「Windows」と答えるのではないでしょうか。 私もそうでした。
気がつけば20年以上、ずっとWindowsと共に歩んできました。

社会人になった頃にはすでにWindows 95の時代は終わり、XPが全盛期。 仕事で使うのはもちろんWindows。自宅もWindows。 「PCといえばWindows」は、空気のように当たり前の選択肢でした。

でも振り返ってみると、Windowsがここまでビジネスの標準になった背景には、 ちゃんとした「理由」があります。

そしてその理由が、少しずつ変わってきている。

今回から4回にわたって、私がWindowsからMacとの「二刀流」に行き着くまでの話を書こうと思います。第1巻は「歴史」です。自分がPCとどう歩んできたかを振り返りながら、Windows・Mac・そしてかつて日本を席巻したNEC PC-98シリーズの歴史を辿ってみます。

第1巻:私とPCの歴史
第2巻:IT管理者としてみる差
第3巻:細かいWIndowsとMacの差
第4巻:機能差・スペック比較

私とPCの歴史


エンジニアとして24年、PG・SE・営業・CE・社内SEと、人がやらないことを拾いながら渡り歩いてきました。どのロールにいても、手元にあったのは常にWindowsでした。

会社支給のPC、自分で選んだPC、どれもWindows。
Macを使っているのは、デザインや出版系の会社のみ。
「おしゃれだな」とは思っても、「自分には関係ない」と思い続けていました。

そんな私がなぜ、今Macを買おうとしているのか。
その答えを探す旅として、まずPCの歴史を振り返ってみます。

Windows Mac / macOS NEC PC-98シリーズ Apple CEO 在任期間 Microsoft CEO 在任期間
1977 Michael Scott 1977–1981 Bill Gates 1975–2000
1982 PC-9801 発売(16bit・日本語対応)国内PC市場を席巻 Mike Markkula 1981–1983 Bill Gates 1975–2000
1984 System 1.0(初代Macintosh・GUI採用) PC-9801E / F / M 各モデル展開 John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1985 Windows 1.0(MS-DOSのGUIシェル) System 2.0 PC-9801VM(V30 CPU搭載) John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1987 Windows 2.0 System 4 / Mac II(カラー対応) PC-9801VX(286 CPU搭載) John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1988 PC-9801RA(386 CPU・SCSI内蔵) John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1989 PC-9801N(98NOTE・ノートPC普及へ) John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1990 Windows 3.0(大ヒット・普及の転換点) System 7 PC-H98(HYPER98) John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1991 PC-9821(初代・マルチメディア対応) John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1992 Windows 3.1 System 7.1 PC-9821(98MULTI)Windows 3.0標準搭載 John Sculley 1983–1993 Bill Gates 1975–2000
1993 PC-9821 98MATE / 98FELLOW Michael Spindler 1993–1996 Bill Gates 1975–2000
1994 Mac OS 7.5 CanBe 発売 マルチメディアPC路線 Michael Spindler 1993–1996 Bill Gates 1975–2000
1995 Windows 95(大ヒット・PC普及の決定打) Mac OS 7.5.3 PC-9801BX4(9801型番 最終機)VALUESTAR登場 Michael Spindler 1993–1996 Bill Gates 1975–2000
1996 Windows NT 4.0 Mac OS 7.6 Gil Amelio 1996–1997 Bill Gates 1975–2000
1997 Windows 98(先行) Mac OS 8(Jobs復帰) PC98-NX 発表(PC/AT互換機へ移行) Steve Jobs 1997–2011 Bill Gates 1975–2000
1998 Windows 98 Mac OS 8.5 / iMac G3 登場 Steve Jobs 1997–2011 Bill Gates 1975–2000
1999 Mac OS 9 Steve Jobs 1997–2011 Bill Gates 1975–2000
2000 Windows Me / 2000 Mac OS 9.0.4 Steve Jobs 1997–2011 Bill Gates 1975–2000
2001 Windows XP(NT系と9x系を統合) Mac OS X 10.0 Cheetah(Unix基盤・Aqua UI) Steve Jobs 1997–2011 Steve Ballmer 2000–2014
2002 Mac OS X 10.2 Jaguar PC-9800 受注生産へ移行 Steve Jobs 1997–2011 Steve Ballmer 2000–2014
2003 Mac OS X 10.3 Panther PC-9800 受注終了(9月) Steve Jobs 1997–2011 Steve Ballmer 2000–2014
2005 Mac OS X 10.4 Tiger / Intelへの移行発表 Steve Jobs 1997–2011 Steve Ballmer 2000–2014
2007 Windows Vista Mac OS X 10.5 Leopard / Intel Mac 完全移行 Steve Jobs 1997–2011 Steve Ballmer 2000–2014
2009 Windows 7(Vista批判を払拭・大ヒット) Mac OS X 10.6 Snow Leopard Steve Jobs 1997–2011 Steve Ballmer 2000–2014
2011 OS X 10.7 Lion Tim Cook 2011–現在 Steve Ballmer 2000–2014
2012 Windows 8(タッチUI・賛否両論) OS X 10.8 Mountain Lion Tim Cook 2011–現在 Steve Ballmer 2000–2014
2013 Windows 8.1 OS X 10.9 Mavericks Tim Cook 2011–現在 Steve Ballmer 2000–2014
2014 OS X 10.10 Yosemite Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2015 Windows 10(無償アップグレード) OS X 10.11 El Capitan Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2016 macOS 10.12 Sierra(Siri搭載) Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2017 macOS 10.13 High Sierra Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2018 macOS 10.14 Mojave(ダークモード) Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2019 macOS 10.15 Catalina Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2020 macOS 11 Big Sur(Apple Silicon M1) Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2021 Windows 11(タスクバー刷新) macOS 12 Monterey Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2022 macOS 13 Ventura Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2023 macOS 14 Sonoma Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2024 macOS 15 Sequoia(Apple Intelligence) Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在
2025 macOS 26 Tahoe(Liquid Glass デザイン) Tim Cook 2011–現在 Satya Nadella 2014–現在


私の自宅には、子供のころからPCが転がっていました。

何に使うのだろう——そう思いながらも、ビデオデッキのような見慣れない機械が部屋の隅に置いてあるのを今でも覚えています。電源を入れると「ガチャガチャ」と動き出すあの音と動作が、子供心にたまらなくワクワクしました。

1990年頃でしょうか。親がお古としてくれた、自分専用の初めてのPCはNEC PC-98の5インチフロッピーモデルでした。なぜかはわかりませんが、「シューティングゲーム」と「一太郎」がついてきたのを覚えています。家にはラインプリンタがあったので、印刷のたびにフロッピーを入れ替えながら作業していました。今思えば、なんとも手間のかかる話ですが、それが当たり前の時代でした。

当時はMS-DOSをベースに、BASICを少し触るくらいのものでした。DOSが何なのかもよくわからないまま、ただ画面に向かっていた記憶があります。あの黒い画面は、いったい何なんだろう——そんな疑問を抱えながらも、不思議と引き込まれていました。

転機は高校時代です。Windows 3.1、そしてWindows 95に初めて触れました。

マウスという概念、マルチウィンドウとマルチタスクの世界——すべてが驚きの連続でした。OSというものの存在、起動時の設定ファイル(Autoexec.bat・Config.sys)の仕組み、音源やデバイスを追加できるという拡張性。まさに「夢の機械」でした。この頃に身につけた感覚は、今もPCを触るうえでのベースになっています。日本語の文字コードの複雑さ、表現の難しさを知ったのもこの時期です。

その後は自作PCの時代へ。Windows XPの頃だったでしょうか。

秋葉原でパーツを買い集め、1から組み立てる——まさに高級プラモデルでした。メモリの相性問題、HDDの当たり外れ、NVIDIAとATI(現AMD)のビデオカード論争。あの頃の秋葉原には独特の熱気がありました。ちなみに私はATI推しでした。赤の発色が好きだったんです。

この間、Macをまったく触らなかったかといえば、そうではありません。

ただ、周りでMacを持っていたのは叔父だけで、「見学させてもらう」程度のものでした。知る人ぞ知る機器——当時の私にとってMacは、そんな存在でした。
Macの方が先進的で、Windowsは後発であることを後から知りました。

こうして振り返ると、私のPC歴はそのまま日本のPC史の縮図でもありました。

PC-98からWindows、自作PCへ——その流れの中で、Macはずっと「別の世界の話」でした。では、なぜPC-98は消えたのか。なぜWindowsがビジネスを制覇したのか。そしてなぜMacは生き残り続けたのか。

年表を眺めながら、3つのポイントで整理してみます。


ポイント① PC-98はなぜ消えたのか

PC-98が全盛だった時代、日本のPCといえばNEC一択でした。その圧倒的な存在感を持っていたPC-98が消えた理由は一言、「独自規格の限界」です。

当時、日本語表示はハードウェアレベルで処理する必要があり、PC-98はそのために独自設計を持っていました。しかしDOS/Vの登場とWindows 95の普及により、世界標準のPC/AT互換機でも日本語が扱えるようになります。「PC-98でなければならない理由」が消えた瞬間でした。

先程、日本語の文字コードの複雑差、表現の難しさの話をしましたが、それだけ日本語処理は特別な課題だったのです。まさにその理由がなくなってしまいました。今でも公共機関・自治体・学校などでは一太郎の指定がある程に、日本語の表現には優れていますし、FEPとしてのAtokは素晴らしいと感じます。

独自規格で市場を制覇した製品が、世界標準の波に飲み込まれた。PC-98の歴史はそのことを物語っています。まさに、私のPC遍歴がそのまま表れています


ポイント② Windowsはなぜビジネスを制覇したのか

最大の理由は様々あると思いますが、私は「Active Directoryによる統合管理」です。

数百台・数千台のPCを一元管理できること——これは企業IT部門にとって絶対条件です。ユーザー管理、セキュリティポリシーの一括適用、ソフトウェア配布をネットワーク越しにコントロールできる仕組みは、当時Windowsにしか実現できませんでした。

Office製品の販売、豊富なビジネスアプリ、「Windowsを選ばない理由」は企業からほぼ消えていきました。社内SEとして現場に立ってきた私自身、この統合管理の重みは痛感しています。組織規模になると、管理の仕組みがないことは致命的なのです。

現場で感じるのは、「みんなと同じであること」も大きかったという点です。日本の商習慣として、先行者の成功体験を踏襲する傾向は強く、IT選択も例外ではありません。周りがWindowsを使っているからWindows、取引先がOfficeで送ってくるからOffice——その積み重ねが、Windowsの牙城をさらに強固にしていきました。


ポイント③ Macはなぜ生き残れたのか

1990年代のAppleは、実は相当苦しい時期を過ごしていました。CEOが次々と交代し、身売りの噂も飛び交うほどの低迷期です。

転機は1997年のJobs復帰。製品ラインを大胆に絞り込み、1998年のiMac G3でPCのイメージを根底から覆しました。2001年のMac OS X(Unixベース)がクリエイターの心を掴み、デザイン・映像・音楽の領域でWindowsとは異なる独自のポジションを確立していきます。

そして決定的な強みは「ハードとソフトを一体で設計し続けたこと」です。部品が汎用化していく中で、Appleだけは垂直統合のこだわりを守り続けました。

PC-98は独自規格ゆえに消え、Macは独自規格を持ちながら生き残った。その違いは「規格を守ることが目的か、体験を守ることが目的か」の差だったのかもしれません。


PC-98の消滅、Windowsの制覇、Macの生存——この3つの歴史の先に、私が「二刀流」に行き着く理由があります。次巻では、ビジネスの現場という視点からWindowsとMacを比べていきます。